中国人の好きな色
中国に行って街中を歩いているとと、比較的すぐに目に付くものがある。
それは何か?
答えは、真っ赤な横断幕だ。
彼らにとっての横断幕は、店の宣伝や会社のスローガン掲示など
生活と密接に関わっている。
集会やイベントでも横断幕を用意することがあるから、よっぽど
なじみがあるものなのだろう。
ここら辺の感覚の違いは、日本人として結構面白いものがある。
でもそれ以上に面白いのは、中国の横断幕が「常に赤い」ことだ。
彼らはいつも赤の生地に黄色い文字で何かを書く。
以前、中国人に「なぜ横断幕はいつも赤いのか?」と聞いたことがあった。
彼らの返事はこうだ。
「赤は情熱の色だから、中国人はみんな好きです。」
なるほどなー、と納得すると同時に少し違和感がある。
たとえば、日本人が好きな色は何だろうか?
赤・黄色・緑・青といった色は浮かぶが、
いわゆる「国民色」とでも呼ぶべき色は見つからない。
そう考えると、彼らが発した「中国人はみんな好き」という言葉には、
若干の違和感を感じないだろうか?
(ちなみに余談だが、戦隊ヒーローのリーダーが常に赤いのは、
ゴレンジャー放送開始前に、子どもたちにアンケートを採った結果だそうだ。
つまり、男の子と女の子、どちらも当時は赤が一番好きな色だったらしい。
そう考えると、赤が良い理由も分からないではない。)
僕が思うに、「赤」といえば共産党を象徴する色だ。
だからこそ、彼らの生活に赤がなじむのは当然のことなんだと思う。
それが、中国の横断幕がいつも赤い理由だ。
でも彼らは「赤=情熱の色」と表現する。
ここに、共産党の影響力の低下とともに、彼らの中に暗に漂う「合理化」のロジックが見え隠れしているようでならない。
町中に赤が多いのは何でだろう?情熱の色だからかな?
うん、きっとそうだろう。そうに違いない。
でも僕らだって、こういう思考に慣れているはずだ。
たとえば、「日本の伝統」。
僕たちは男が働き、女が家を守るという思考に慣れている。
正月に初詣に行くのも当たり前だ。
しかし、そういう家族の形は比較的新しく出来たものだし、
初詣はもともと鉄道会社が発案したイベントらしい。
現状の風習や習慣を是として、その理由を後付けで考えるのは簡単だ。
しかし時には、その身近な慣習を意識して、
その理由を考えてみる必要があるのかもしれない。
中国にて、そんなことを考えた。